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前の職場が急に良く見えた話——転職後の美化の正体(ワークシート付)

ストレス
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転職して間もない頃、ふとした瞬間に前の職場のことを思い出す。

会議が終わったあと、誰かがボケをかましてみんなが笑う、あの空気。
ランチの時間、「行く?」って声をかけたら特に理由もなく数人が集まってきた、あの感じ。
特別なことは何もない、普通の日常だったのに。

なぜか今になってそのシーンが鮮明に浮かんでくる。

「なんか、前の方が楽しかったな」

そう思った瞬間、ちょっと焦った。

転職してまだ日が浅いのに、もう後悔してるのか、と。

美化は、静かに始まる

転職してすぐの頃は、新しい環境への緊張と期待でいっぱいだ。

でも1ヶ月、2ヶ月と経つうちに、ふとした拍子に前の職場の記憶が戻ってくる。

私の場合、それが始まったのは新しい職場の文化に「あれ?」と思った瞬間だった。

前の職場はチームのノリが合っていた。
仕事の話も私事の話も、あまり境目なく話せる人たちが多かった。
「これってどう思う?」って気軽に聞ける雰囲気があって、誰かが正直な意見を言っても雰囲気が壊れない。

そういう空気が当たり前だと思って過ごしていた。

今の職場は違う。
悪いわけじゃない。
でも、違う。

みんな淡々と仕事をしている。
それぞれのタスクに集中していて、雑談のテンポが違う。

情報をどのタイミングで・誰に・どんなトーンで共有するかの文化が、自分が知っているものと微妙にズレている。

そのギャップに気づいた瞬間から、前の職場がにわかに輝き始めた。

「あそこはノリが合って、楽しかったな」

でも、記憶は都合よく編集される

正直に言えば、前の職場は良いことばかりじゃなかった。

休日に連絡が来ることもあった。
業務量の偏りも、理不尽だと感じた場面も、何度もあった。

「もうここでは成長できない」と感じた瞬間があったからこそ、転職を決めた。

なのに、今になって思い出す前の職場の風景は、なぜかハイライトシーンばかりだ。

これが「美化」の正体だと思う。

人間の記憶は、時間が経つほどネガティブな感情を薄め、ポジティブな感情を相対的に大きく残す傾向がある。
今の環境に違和感やしんどさがあればあるほど、前の環境が「対比」として浮かび上がりやすくなる。

転職後に前職が良く見えるのは、あなたの新しい職場が劣っているわけじゃなくて、記憶が勝手に選択・編集を始めているだけかもしれない。

採用担当として見てきた「戻りたい人」

採用担当をしていると、前職への未練を抱えたまま転職活動をしている人と会うことが少なくない。

「転職して半年なんですが、前の会社の方が良かったかもしれなくて」

そう言う人の話をよく聞いてみると、ある共通点がある。

前職の良かったことは具体的にスラスラ出てくるのに、辞めた理由を聞くと「まあ、いろいろあって…」と言葉が濁る。

辞めた理由が曖昧になっていく。
それが、美化が進んでいるサインだと思う。

採用担当として見ていると、この状態のまま次の転職をしてしまう人もいる。
そして同じことを繰り返す。

前職を懐かしみながら転職して、また「前の方が…」となっていく。

私自身も、その入り口には立った。

新しい職場でチームの雰囲気の違いを感じるたびに、前の職場のノリを思い出して、「戻れたら…」と頭の中でシミュレーションし始めていた。

でも踏みとどまれたのは、辞めた理由を再確認したからじゃなくて、今の職場の良い部分に少しずつ気づき始めたからだった。

「戻りたい」気持ちの整理の仕方

美化は「なかったこと」にできない。
無理に打ち消そうとすると、余計に前職への思いが強くなる。

私がやったのは、別の方向への切り替えだった。

今の職場の「良いな」を意識的に探す

最初はなかなか見つからない。

でも探し始めると、少しずつ見えてくる。

仕事の進め方が合理的だとか、責任の範囲が明確で動きやすいとか、前職にはなかった良さが確かにある。

美化と「今の良さへの気づき」は、両立できる。

前職を懐かしみながら、今の職場に馴染もうとすることは、矛盾しない。

辞めた理由を言葉にして残しておく

転職を決めた時に感じていた不満や違和感を、なるべく具体的に書き出しておくことをすすめたい。

「チームの文化が合わなかった」でも「このまま続けても成長できないと思った」でもいい。

漠然としていた気持ちを、言葉にして手元に残す。

美化が始まった時に、そのメモを見返す。
記憶が編集を始める前の、あの頃の自分の声が聞こえてくる。

「懐かしい」と「戻りたい」を分けてみる

前の職場を懐かしむことは、悪いことじゃない。

ノリが合う仲間と働いていた日々は、本当に楽しかったはずだ。
その感情は本物で、否定する必要はない。

ただ、「懐かしい」と「戻りたい」は別の感情だ。

懐かしいのは、あの時間や人たちへの愛着。

戻りたいは、今の環境への不満や適応できていない焦りが生み出す「出口の幻」に近い。

それでも、懐かしいのは本物だ

前の職場が急に良く見えた時、たいていの場合、今の環境に何かしんどいことがある。

その「しんどさ」の正体を見てみると、意外と「慣れれば解決する問題」だったりする。

チームの空気感も、情報共有の文化も、自分が慣れてくれば「こういうもの」として受け取れるようになっていく。

転職してまだ間もない。
前の職場を懐かしみながら、今の場所に少しずつ馴染んでいく。
そのくらいのペースで、いいんじゃないかと思っている。

美化は、今ここに適応しようとしているサインでもある。

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