採用担当として6年間、ずっと「使う側」だった。
エージェントから毎月のように連絡が来る。
「御社に合いそうな候補者がいます」「今月こんな方がいます」と。
送られてくる職務経歴書を見て、「この方がなぜ?」と首をかしげることも一度や二度ではなかった。
ピンキリだな、とずっと思っていた。
そんな私が自分で転職エージェントに登録した。
使ってみてわかった。
「ピンキリ」だったのはエージェントの担当者だけではなく、使う側の私自身の理解の問題でもあった。
「使えばうまくいく」という思い込みが一番危ない
転職エージェントに登録する人の多くは、こう思っているはずだ。
「プロに任せれば、自分に合う会社を一緒に探してくれる」
その感覚は半分正しくて、半分は危うい。
エージェントのビジネスとしてのゴールは、転職を成立させることだ。
紹介した候補者が採用・入社することで報酬が発生する仕組みになっている。
だから、転職を成立させることに対してのサポートは手厚い。
面接対策、情報提供、日程調整——ここは本当に動いてくれる。
でも「この会社が自分に合うかどうか」の判断は、エージェントにはできない。
社風、チームの雰囲気、上司との相性、仕事のスピード感。求人票に書いていないことの方が、実際の働き心地には影響する。
担当者がその職場で働いたわけではないのだから、当然ではある。
つまりこういうことだ。
エージェントは転職を「成立」させるプロであって、「合う仕事を見つける」プロではない。
この違いを理解していないまま全部任せると、条件は整った転職ができる。
でも1年後に「なんか違う」となる可能性がある。
実際に使ってみてわかった落とし穴

自分がエージェントに登録して、一番感じたのはこれだった。
方向性が曖昧なまま登録すると、流される。
「こういう求人もありますよ」「こんな企業はどうでしょう」と次々に出てくる。
エージェントは求人をたくさん紹介することで選択肢を広げようとしてくれているのだが、こちらの軸が定まっていないと、気づけば当初の方向性とは違う会社の選考に進んでいる。
採用担当として候補者を見てきた側から言うと、「エージェントに言われて来た」ような雰囲気の候補者は、面接でも伝わる。
なぜこの会社なのか、なぜこの仕事なのかが自分の言葉で語れない状態は、選考にも影響する。
もう一つの落とし穴が、担当者の質の差だ。
採用担当時代から感じていたが、担当者によって全然違う。
候補者のことを丁寧に考えてくれる担当者もいれば、とにかく件数を送ってくるだけの担当者もいた。利用者として登録してみても、この感覚は変わらなかった。
担当者の当たり外れが、転職活動の質に直結する。
でもここだけは、本当に使える
落とし穴を並べたが、逆説的に言う。
入社直前の条件交渉フェーズは、エージェントを使い倒すべきだ。
内定が近づいてくると、エージェントのサポートが明らかに手厚くなる。
年収交渉の場面では、自分では言い出しにくいことを代わりに動いてくれる。
「○○万円を希望したい」という交渉を、企業との間に立ってやってくれるのは、正直かなり助かった。
採用担当時代、エージェントからの年収交渉を受ける場面を何度も経験していた。
丁寧に、粘り強く交渉してくれるエージェントの存在は、企業側にとっても「本気の候補者」というシグナルになる。
あの交渉を候補者側から受けるとこういう体験になるのか、と感じた。
条件面——年収、働き方、入社時期——はエージェントが本当の力を発揮する領域だ。
ここを遠慮して使わないのはもったいない。
逆に言えば、エージェントが埋められないのは「実際の職場がどうか」という情報だ。ここは自分で取りに行くしかない。社員のクチコミや年収、実際の選考体験談を見られるサービスをひとつ手元に置いておくと、担当者の話を鵜呑みにせず、自分の目で確かめながら進められる。
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結局、鍵は「選び方」と「フェーズ別の使い方」

エージェントは使い方次第で全然違う結果になる。
そのために大事なことを整理する。
①登録前に自分の軸を決めておく
「何のために転職するのか」「外せない条件は何か」を自分の中で整理してから登録する。この軸がないと、担当者のペースに乗せられる。
軸があると、提案された求人に対して「これは違う」と言える。
ただ、この「軸を決める」が一番難しいという人も多い。
転職したい気持ちはあるが、何がしたいかわからない状態でエージェントに登録するのは正直おすすめしない。
そういうときに使えるのが、ハローワークで無料で受けられるキャリアコンサルタントだ。
予約制で、資格を持ったカウンセラーと1対1で話せる。
転職を急かされる心配がないので、「まだ方向性が定まっていない」段階でも使いやすい。
エージェントに登録する前の整理の場として、一度活用してみる価値はある。
②最初の面談で担当者を見極める
最初の面談が、担当者を見極める唯一の機会だ。見るべきポイントは3つ。
「自分の希望をちゃんと聞いてくれるか」
「とりあえず受けることを勧めてこないか」
「年収の話を具体的にしてくれるか」。
合わないと感じたら、担当変更を依頼していい。
気まずくても、担当者との関係は活動全体に影響する。
③選考中盤まではエージェントに”頼りすぎない”
企業リサーチ、カルチャーの見極め、自分がなぜその仕事をしたいかの言語化——これは自分でやる。
エージェントから提供される面接対策の情報は参考にしながら、自分の視点で判断する主体性を手放さない。
④終盤の条件交渉はエージェントに任せる
内定が出たら、年収・働き方・入社日の交渉はエージェントに積極的に動いてもらう。
現職の年収と希望額を正直に伝えておくと、思ったより丁寧に動いてくれる。
ここは遠慮しない方がいい。
まとめ
採用担当として使う側から見てきた分、実際に使ってみてギャップがあった部分もある。
でも一番大きかったのは、「エージェントに何を期待するか」の解像度が上がったことかもしれない。
全部任せる道具ではない。
でも、使い方を設計すれば頼れる道具になる。
転職を考えているなら、まずは登録して最初の面談を受けてみることをおすすめする。
面談そのものが、自分の状況や希望を整理するきっかけになる。
そのうえで、担当者を見極めて、フェーズごとに使い倒してほしい。
そのとき、担当者の言葉だけに頼らないための材料として、企業の年収やクチコミ、選考対策の情報を自分でも見ておいてほしい。「なぜこの会社なのか」を自分の言葉で語れる転職に、一歩近づくはずだ。
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