最近、1on1のたびに「楽しいですか?」と聞かれる。
上司は優しい。
本当に気にかけてくれているのがわかる。
なのに毎回「楽しいです!」と答えている。嘘、というほどでもない。
でも本当のことを言っているわけでもない。
ビデオ通話の画面が閉じるたびに、なんかもやっとした気持ちが残る。
「うまく言えた」という安心感と、「また言えなかった」というやり切れ感が同時にある。
これ、どっちが本当の気持ちなんだろう、とふと思った。
転職したてが「いい人」を演じる理由
転職直後に自然と「いい人」を演じてしまうのは、たぶん多くの人が経験することだと思う。
新しい職場では、まだ何もわかっていない。
業務の全容も、職場の人間関係も、どこまで本音を言っていい場所なのかも。
そういう状況で「問題ないです」「楽しいです」は、ある意味で合理的な返答だ。
波風を立てない。
印象を悪くしない。
まず信頼を積み上げる。
正直に言うと、私はこれを意識的にやっている部分がある。
仕事中は演じる、時間外は素の自分でいる。そういう使い分けを最初から決めていた。
採用担当として何年もいろんな中途入社の人を見てきたが、入社直後に「なんでも本音を言う人」はだいたい損をする。
信頼関係がないうちに問題提起をしても、「空気が読めない人」と見られるリスクがある。
だから戦略として演じることは、間違っていない。
頭ではそうわかっている。
でも、消耗するんだよな、というのが正直なところだ。
1on1のあの瞬間のこと

一番わかりやすいのが、1on1の時間だ。
「最近どうですか?楽しいですか?慣れてきましたか?」
相手は本気で心配してくれている。その優しさは伝わっている。
だからこそ、こちらも「楽しいです!」「慣れてきました!」と、少し明るめのトーンで返してしまう。
本当のことを言えば、まだ業務の全体像がつかめていなくて焦っていること。
自分の動き方がわかっていなくて、とりあえず言われたことをこなしている感覚があること。
でもそれを、入社して間もない段階でどう切り出せばいいかがわからない。
「問題ないです」という一言が、実は一番難しい。
問題がないわけじゃないけど、今言うべき問題でもない気がする。
言っていいのかもわからない。
そもそも問題と呼べるほど大きいのかもわからない。
だから「問題ないです」になる。
画面を閉じた後、ホッとしながらも、「また言えなかった」という気持ちがじわっと残る。
両方あるのが正直なところだ。
「演じる」と「嘘をつく」は違う
ここで少し整理したいのだが、「演じること」と「嘘をつくこと」は別だと思っている。
演じているのは確かだ。でも、嘘をついているわけじゃない。
「楽しくないのに楽しいと言った」というより、「楽しい部分もあるし、しんどい部分もあるけど、今は楽しい側を前に出した」という感覚の方が近い。
採用担当として、面接でも同じ景色をよく見た。
「この会社に絶対入りたいです!」と言いながら、実は条件面でかなり迷っている候補者。
「問題ありません!」と言いながら、本当は引っかかっていることがある候補者。
それを「嘘をついている」と断ずることはできない。
みんな、状況を読んで、何をどこまで言っていいかを判断している。
それは社会人として当たり前の能力だと思う。
だから、演じていることを責める必要はないと思っている。
それでも消耗するのは、演じることが「正しい」かどうかじゃなくて、「ずっとやり続けることのコスト」の問題だ。
消耗する理由を観察してみた
私がしんどくなるのは、たぶん「出口が見えない」感覚があるからだと思う。
入社直後だから仕方ない、あとで信頼が積み上がれば本音が言えるようになる。
そういう見通しはあるにはある。
でも、「その『あとで』はいつなんだろう」というのがよくわからない。
前の職場では、信頼できる人が少しずつできて、本音を言える場所が徐々に広がった。
でも今の職場はまだ日が浅い。
誰が信頼できて、誰の前では演じ続けた方がいいか、そのマッピングがまだできていない。
だから全方向に対して気を張り続けることになって、それが地味に体力を削っている。
あと、これはちょっと恥ずかしい話だが、「うまく演じられた」時に「よかった」と思ってしまう自分に気づいてしまうことがある。
なんだか、「本当の自分が評価されたわけじゃないのに喜んでる」みたいな感覚がある。
これが地味にしんどい。
演じているキャラクターが評価されても、自分が評価された気がしない。
でも演じることをやめる方法もわからない。
私がやっていること

結論めいたことを言うつもりはないが、今やっていることを書いておく。
「演じる」に罪悪感を持つのをやめた。
これが一番大きい。
演じることを「本当の自分をごまかしている」と思うより、「今この環境で生きるための戦略をとっている」と考える方が、消耗しにくい。仕事中は演じる、時間外は素でいる。
その区切りを自分で決めているのなら、それは自己管理の一種だと思う。
「全部言わなくていい」を意識している。
1on1で「問題ないです」と言っても、それは嘘ではない。
今言う問題じゃないだけ、と思うようにした。
信頼が積み上がれば、言えることは増える。
今はまだそのフェーズじゃない。
それでいい。
仕事外で「素」でいられる時間をちゃんと取っている。
これが実は一番効いているかもしれない。
仕事中は演じると決めているなら、仕事外では徹底的に素でいる。
好きな人と話す、好きなことをする、思ったことをそのまま言える場所にいる。
バランスの話だけど、仕事外でも演じ続けると完全に消耗するので、ここは意識している。
最後に
新しい職場に入って間もない時期に、「本音を言えない自分はダメだ」とか「コミュニケーションが下手だ」と思う必要はないと思っている。
誰でも、状況を読みながら何をどこまで言うかを調整している。
それは当たり前のことで、弱さでも嘘でもない。
ただ、「演じ続けること」が習慣になりすぎて、いつしか「本当の自分が何を考えているのかわからなくなる」状態になるのは注意したい。
自分の違和感や本音を、どこかで言語化しておく場所を作っておくことが、長く働く上では大事だと感じている。
私はまだ探しているところだけど。
📋 この記事の連動ワークシート(無料)
「自己診断チェックリスト」「本音の言語化シート」「使い分けプランナー」「3ヶ月後の目標宣言」の4シートをまとめたGoogleスプレッドシートです。コピーしてご自由にお使いください。


コメント