入社して数週間、あの夜のことを思い出した
新しい会社に来て、まだひと月も経っていない。
デスクの位置も、コーヒーメーカーの場所も、ようやく体に馴染んできたくらいのタイミングで、ふと思い出した。
転職を決めた夜のこと。
誰かに相談したわけでも、背中を押してもらったわけでもない。
自分の部屋で、スマホの画面を眺めながら、「よし、動こう」と決めた、あの夜だ。
正直に書いておきたいな、と思ったのはなぜだろう。
たぶん、「転職を考えてる人」が読んでくれる記事をいくつも書いてきて、自分自身のことはあんまり書いてこなかったから。
採用担当として6年間、人事の仕事をしてきた。新卒採用も中途採用もやった。
何百人もの「転職しようとしている人」を見てきた。
そんな私が、転職を決めた夜、どんな気持ちだったかを。
「ここでは成長できない」と気づいてしまった日
前職で人事を6年やっていた。
最初は「絶対無理」と思いながら異動を受け入れた仕事だったが、いつの間にか本気になっていた。
新卒採用、研修設計、労基対応。
ほぼ一人でこなしながら、「もっとうまくやれるようになりたい」という欲が育っていった。
でも、あるとき気づいた。
このままここにいても、それ以上にはなれないな、と。
スキルアップしたくても、社内には必要なツールがなかった。
採用管理システムも整っていない。
データを活用したくても、そもそも整備されていない。
「これを使いたい」
「こういう仕組みを作りたい」
と思っても、一人でできることには限界があって、かといって周りに余裕がある人もいなかった。
一人でできる工夫はやり尽くした、と感じた瞬間があった。
限界というのは、派手に来るものじゃない。
「もうダメだ」って崩れ落ちるんじゃなくて、静かに「あ、ここまでか」と気づく感じ。
その感覚が来た。
こっそり、活動を始めた

その日から、在職中のまま転職活動を始めた。
誰にも言わなかった。
採用担当という仕事柄、「転職活動中」というのがバレたらまずい気がしたし、何より、まだ「行くと決まったわけじゃない」という状態で人に話すのが怖かった。
昼休みにスマホで求人を見て、夜は自分の部屋でポートフォリオを整えて、有休を使いながら面接に行った。
面接の帰り道、誰かに連絡したくなる気持ちがあった。
「受けてきたよ」「どうだったかな」って話したかった。でも、しなかった。
採用担当として、転職活動中の人をたくさん見てきた。
「在職中は疲れますよね」と言葉をかけながら、実は自分もそっち側にいた。
ちょっと複雑な気持ちだった。
一人で決めた、という話
転職の相談は、結局誰にもしなかった。
親にも友人にも言わなかった。
「相談しよう」と思わなかったわけではない。
ただ、「どうしたらいいと思う?」って聞いたとき、その答えに自分が縛られそうな気がして、やめた。
これは正解だったのかわからない。
相談できる相手がいる人は、素直に相談した方がいいと思う。
ただ私の場合、「転職する/しない」の判断を誰かに委ねたくなかった。
それだけだった。
自分で決めた、という感覚が欲しかったのかもしれない。
内定をもらってから、初めて「辞めます」と言った

転職先が決まったのは、活動を始めてから数ヶ月後だった。
内定の連絡を受けた日、しばらく画面を眺めて、深呼吸して、翌日に上司に「退職の意向をお伝えしたいです」と話した。
言った瞬間の感覚は今でも覚えている。
怖かった。「本当にこれでよかったのか」という気持ちが、急に押し寄せてきた。
と同時に、スッキリした。もやもやしていたものが、すとん、と落ちた感じ。
この二つの感情は、矛盾しているように見えて、同時に存在していた。
「怖い」と「スッキリ」が、ふたつ並んで、私の中にあった。
採用担当として、今これを書いていて思うこと
転職を決める瞬間って、誰でも一人だと思う。
最終的には、「自分がどうしたいか」しかない。
周りの意見を聞いたとしても、判断するのは自分だ。
私は一人で全部やろうとしたけど、今思えば、転職エージェントに相談するだけでも違ったかもしれない。
活動の進め方を聞いたり、求人の傾向を教えてもらったり。
「決断」は一人でも、「情報収集や段取り」は誰かを頼っていい。
採用側から見て、転職エージェント経由で来る候補者の方が、応募書類の完成度が高いことが多かった。
準備のサポートをしてもらえるから、というのが大きかった。
あの夜について、これだけ言えること
「転職を決めた日のこと、どんな感じでしたか」と聞かれたら、正直こう答えると思う。
怖かった。
でも、スッキリした。
それだけだ。
劇的なことは何もなかった。
誰かに背中を押してもらったわけでも、突然すべてがクリアになったわけでもない。静かに、限界に気づいて、静かに、動き始めた。
転職を考えている人は、たぶん今、どこかで同じような感覚の中にいると思う。
「本当にこれでいいのか」「後悔しないか」って、堂々巡りしている感じ。
そのループから抜け出す方法は、正直わからない。
ただ、「怖くて当然だ」とは言える。私もそうだったから。
まとめ
転職を決めた日のことを、ちゃんと書いておきたかった。
スキルアップしたかったが、社内のツール・環境・余裕がなく、限界を感じた。在職中にこっそり活動した。一人で決めた。内定をもらってから「辞めます」と言った。
怖かった。スッキリした。両方、同時に。
採用担当として「転職」という言葉を毎日扱いながら、自分がその当事者になる日が来るとは、なんとも不思議な気分だった。
でも今、新しい場所にいる。
あの夜、動いてよかった、と今のところは思っている。
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