「この年になって、何を身につけたのか言えない」という不安
「人間関係も良いし、仕事も好きなんです。残業もありません。でも…」
退職相談で、こんな言葉を聞くことが増えました。
特に営業事務やサポート職をしている30代から、こんな相談を受けます:
「営業のサポートをしています。人間関係も最高です。でも、やっていることが業界特有のデータ処理とか、誰でもできる雑務ばかり。他の業界でも活かせるスキルが身についている気がしない。転職するときに『この年になって社会人として何を身につけたのか』って聞かれたら、何も言えなくなる。そうなる前に、今判断が必要だと思う」
その言葉に、私は深く共感しました。
でも同時に、違和感も感じました。
なぜなら、その相談者は、実は大きなスキルを身につけていたからです。
単に、そのスキルが見えていなかっただけ。
これは「スキル不足」ではなく、「スキルの自己認識ギャップ」です。
そして、このギャップを放置することは、確実に後悔につながります。
なぜ「スキルが身についていない」と感じるのか
理由① 業界特有のデータに目を奪われている
営業事務やサポート職は、その業界特有のデータやシステムを扱うことが多いです。
「◯◯業界のデータ処理」「◯◯システムの操作」「◯◯業界特有の書類作成」
これらを毎日やっていると、本人は「これは◯◯業界でしか使えない」と思い込んでしまいます。
しかし、ちょっと視点を変えてみてください。
「業界特有のデータ処理」の背景には何があるでしょう。
それは、データから何かを読み取り、問題を見つけ、解決策を考える能力ではないでしょうか。
その能力は、データが◯◯業界だろうが××業界だろうが、変わりません。
スキルそのものは転用性が高いのに、「業界特有」という言葉に隠れてしまっている。
これが、最初の落とし穴です。
理由② 「雑務」という言葉で自分のスキルを過小評価している
退職相談で「何をやってますか?」と聞くと、営業事務の方は「雑務ばかりです」と答えることが多いです。
でも、詳しく聞いてみると…
「営業が提出した見積もりの数字が間違っていないかチェックして、間違いがあれば修正するんです。時には『その見積もり価格だと利益が出ませんよ』と営業に指摘することもあります」
「複数のプロジェクトのデータを管理していて、どのプロジェクトが赤字になっているかを毎月分析して、営業チームに報告しています」
これは、「雑務」ではなく、「課題発見と問題解決」です。
でも、本人は「誰でもできる雑務」と言い張ります。
なぜか。それは、やりたい仕事ではなかったからです。
本人がやりたい仕事でなければ、その仕事がどんなに会社にとって重要でも、本人には「雑務」に見えてしまうのです。
理由③ スキルを「他業界でも活かせる言葉」に翻訳できていない
営業事務をしている人が、転職面接で「これまで何をしてきたのか」を説明するとき、多くの人はこう言います:
「営業のサポートをしていました。営業事務の業務全般です」
採用企業の面接官は、この説明を聞いて何を思うか。
「営業事務の経験がある。でも、これは単なる事務職経験。特別なスキルはないんだな」
と判断します。
でも、実際には…
「営業事務を通じて、複雑なデータを整理し、課題を見つけ、営業に報告することで、営業の意思決定をサポートしていた」
こう説明すれば、同じ経歴でも「問題解決能力がある人」に見えます。
スキルは同じなのに、説明方法で評価が変わってしまう。
つまり、自分のスキルを「他業界でも活かせる言葉」に翻訳する能力がないことが、3番目の落とし穴です。
では、どうすればいいのか
ステップ1:自分のスキルを「翻訳」する
まず、やるべきことは、自分がやっていることを、他業界でも活かせる言葉に翻訳することです。
営業事務の仕事を、スキル言語に変換してみてください。
例:

このステップで重要なのは、「業界特有」という言葉を外すことです。
「◯◯業界特有のデータ」ではなく、「複雑なデータの分析」
「業界特有のシステム操作」ではなく、「業務プロセスの最適化」
こう変換することで、同じスキルでも「転用性の高いスキル」に見えるようになります。
ステップ2:「雑務」と感じる仕事の価値を問い直す
次に、やるべきことは、「雑務」と言っていた仕事の価値を問い直すことです。
転職相談を受けていて気づくことは、営業事務の人が「雑務」と言っている仕事の多くが、会社にとって必要不可欠な重要な仕事だということです。
「営業の見積もりミスを防ぐ」ことは、会社の利益を守る重要な仕事。
「プロジェクトの赤字化を早期に発見する」ことは、経営判断に直結する重要な仕事。
なぜ、本人が「雑務」と言うのか。
それは、「やりたい仕事ではなかったから」です。
でも、「やりたい仕事ではない」と「スキルが身についていない」は、全く別の問題です。
もし、今の職場を辞めるなら、理由は「やりたい仕事ではない」ではあっても、「スキルが身についていない」わけではないのです。
この認識の転換が、次のステップに進むための準備になります。
ステップ3:「今のスキル」を活かして、転職先を選ぶ
自分のスキルが見えたら、そのスキルを活かしていける職場を選ぶことが大切です。
営業事務で身につけた「データ分析」「課題発見」「問題解決」の能力は、以下のような職種で活かせます:
- マーケティング職(顧客データの分析)
- 経営企画職(経営データの分析と報告)
- 人事職(組織データの分析)
- コンサルティング(クライアント企業のデータ分析)
- 営業職(営業データの分析と戦略立案)
つまり、営業事務の経験は、転職の障害ではなく、大きな武器なのです。
採用企業の面接でこう答えてください:
「営業事務として複数プロジェクトのデータを管理・分析し、課題を発見して経営判断をサポートしていました。この『データから課題を見つけ、解決策を提案する能力』を活かして、貴社のマーケティング(経営企画など)職で、より広い視点から企業成長に貢献したいと考えています」
これは、採用企業から見ると「スキルと思考力がある人」に見えます。
実践的な行動リスト
理屈は分かったけど、「何から始めたらいいの?」という方へ。
今日から、このアクションを開始してください。
今日(Day 1):自分の仕事を「スキル言語」に翻訳する
営業事務をしている業務の中から、3つ選んで、それを「他業界でも活かせるスキル」に言い換えてみてください。
例えば:
– 「営業見積もりチェック」→「品質管理と問題発見能力」
– 「プロジェクトデータ管理」→「データ分析と可視化能力」
1週間後(Day 7):上司や同僚に「私の強みは何だと思いますか?」と質問
自分では気づかない強みが、他人からの評価に隠れているかもしれません。複数の人から同じことを言われることが、本当の強みです。
2週間後(Day 14):転職サイトで「営業事務経験を活かせる職種」を探す
営業事務の経験が活かせる職種が、どれほど多いか気づくはずです。
1ヶ月後(Day 30):キャリアコンサルタントに相談
「営業事務では何も身についていない」という思い込みを、プロの目で払拭してもらう。それだけで、自分のキャリアの見え方が変わります。
6週間後(Day 42):転職するか、現職に留まるかを判断
自分のスキルが見えたとき、「転職したい」のか「現職で別のやりがいを見つけたい」のか、本当の気持ちが見えてくるはずです。
あなたが見落としているスキル
最後に、伝えたいことがあります。
営業事務やサポート職をしている人は、自分が身につけているスキルを過小評価する傾向があることに気づきました。
「雑務ばかり」と言っていた仕事の中には、実は:
- データから課題を見つける分析力
- 問題を早期に発見する感度
- 複雑な情報を整理し、意思決定者をサポートする力
- 組織全体を俯瞰し、バランスを取る能力
こうしたスキルが、確実に磨かれています。
それは、業界特有のデータを扱っているから見えにくいだけ。
「スキル不足」ではなく、「スキルの認識不足」が、あなたの不安の正体です。
転職するにせよ、現職に留まるにせよ、大切なのは、自分が身につけているスキルを正しく認識することです。
そのとき、採用企業の面接でも、現職での仕事の価値判断でも、あなたの判断基準が変わります。
自分を過小評価するのではなく、正しく評価する。
それが、後悔しないキャリアの選択につながるのです。
最後に
「今は満足だけど、将来が不安」という相談を受けるたびに、私は気づくことがあります。
「その不安は、あなたが自分のキャリアに真摯に向き合っている証だ」と。
でも同時に、その不安の多くは、自分のスキルが見えていないことから生まれているのです。
もし、今この記事を読んで「あ、これ自分のことだ」と思ったなら、今すぐ行動してください。
自分の仕事を「スキル言語」に翻訳してみてください。
複数の人に「私の強みは?」と聞いてみてください。
キャリアコンサルタントに相談してみてください。
その先に、今まで見えなかった自分の価値が、確実に見えてくるはずです。
人間関係も良く、やりがいも感じている職場にいるあなたは、本当に恵まれています。
その恵まれた環境の中で、自分のスキルを正しく認識する。
それが、後悔しないキャリアの選択へと導くはずです。
一緒に、考えていきましょう。
キャリ子より


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