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週に1回、30分。カレンダーに「1on1」という予定が入っている。
転職して間もない私には、まだ担当する業務がほとんどない。
何かに詰まったわけでも、相談が山積みなわけでもない。なのに、毎週その30分がやってくる。
正直に言う。怖かった。
「何かあれば聞いてね」と言われるけど、何がわからないのかもわからない時期というのがある。
とりあえずドキュメントを読む。
会議に出る。
議事録を取る。
でも「自分の仕事」と呼べるものがまだない。そういう状態で週1の1on1がある。
これ、なにを話せばいいんだ。
担当業務ゼロで、毎週1on1がある状況

入社してしばらくは、周りの人が忙しそうにしている横で、私はオンボーディング資料を読んでいた。
会社のことは知りたい。どんな仕事をしているのかも、できるだけ早く理解したい。
でもまだ「私がやる仕事」は決まっていない。プロジェクトに入っているわけでも、担当クライアントがいるわけでもない。
そんな状態で、週1回の1on1がある。
上司がどういう意図でこれを設定しているのか、最初はまったくわからなかった。
進捗を話すには、何も進んでいない。
悩みを相談するには、まだ悩む業務がない。雑談するには、まだ距離感がつかめていない。
「今週は特に…」と言って沈黙が生まれる。
その沈黙が、とにかく怖かった。
1on1の怖さを、ちゃんと掘り下げてみた
そもそも、何が怖いのか。
「怖い」で片付けてしまっていたけど、少し整理してみると、怖さには2つの層があると気づいた。
他者評価への恐怖:「どう思われているか」が怖い
まず一つ目。これはわかりやすい。
上司に「この人、大丈夫か」と思われそうで怖い。
本音を出したら「まだ適応できていないのか」と思われそうで怖い。
沈黙したら「コミュニケーション能力に問題があるのかも」と判断されそうで怖い。
上司の意図が読めないのがとくに厄介なのは、意図が見えないと「どう振る舞えば正解か」が全然わからないからだ。
試験の出題範囲を教えてもらえないまま本番を受けるような感覚に近い。
何を話せば評価されて、何を言えば地雷なのか。
その基準がまだわからない。
だから何を話しても「これでよかったのか」と不安が残る。
自己評価への恐怖:「自分はどんな人間か」が揺らぐ
こっちのほうが、実は根が深かった。
1on1で沈黙してしまったとき、気の利いたことが何も言えなかったとき、私は「あ、自分ってこういう人間なんだ」と思ってしまっていた。
入社してまだ何も貢献できていない。加えて、1on1でも話せなかった。そこから「自分はここにいていい人間じゃないのかもしれない」という認識に、じわじわ繋がっていった。
これは他者評価の怖さとは少し違う。
誰かに何かを言われたわけじゃない。
でも自分の中で「自分とはこういう人間だ」という像が勝手に悪化していく感覚がある。
1on1がうまくいかないことが、仕事の問題じゃなくて「自分そのものの問題」に変換されていくような感じ、と言えばいいか。
転職してよかったのかという不安がある状態に、さらにこれが乗っかってくる。
じわじわと、けっこうしんどかった。
採用担当として、逆側も見てきた
ここで少し立場を変えて話すと、私は前職で採用担当をしていた。
入社後の定着に悩む会社のサポートをしていたこともあるし、オンボーディング中の社員から「1on1がしんどい」という声を聞いたこともある。
実際、上司との1on1でモチベーションが下がった経験がある人は5割を超えるという調査もある。
一方、上司側の本音として多かったのは「何も期待していない、ただ話を聞きたいだけ」というものだった。
入社直後の社員に進捗報告を求めている上司はほとんどいない。
むしろ、何かあったときにすでに関係ができているように、接点を定期的に作っておきたい。
それだけの理由で設定していることが多い。
でも、それが伝わっていない。
上司は「気楽に話せばいい」と思っているのに、部下は「有益なことを言わなきゃ」と構えてしまう。
このすれ違いは、採用担当時代に何度も見てきた。
上司の意図が読めないとき、素直に聞いてみた
私が実際に試したのは、「この時間をどう使うのが上司さん的にはいいですか?」と聞くことだった。
最初の1on1でそれを言ったとき、正直かなりドキドキした。
「そんなことも自分で考えられないのか」と思われたら嫌だなと思った。
でも帰ってきたのは「何でも気軽に話してほしい。業務の話じゃなくても全然いい」という言葉だった。
拍子抜けした。と同時に、肩の力がすっと抜けた。
意図がわからないなら聞いてしまうのが一番早かった。
それだけで、「この人はちゃんとコミュニケーションを取ろうとしている」という印象を与えられる。
少なくとも沈黙して時間を終わらせるよりはずっといい。
「何もない」は報告になる
もうひとつ、認識を変えたことがある。
成果がなくても、観察したことや理解したことは、ちゃんと言語化できる。
「今週はこのドキュメントを読んでいました。〇〇の部分がまだ理解しきれていないので、来週確認させてください」「この会議に出て、こういう理解をしました。合っていますか?」
これは立派な共有だ。
進捗報告は「やったこと」だけじゃない。「今どこにいるか」も報告になる。
入社直後なら、理解の進み具合を共有するだけで十分だと気づいてから、少し楽になった。
本音は全部出さなくていい
「正直、まだ何を話せばいいかよくわからなくて不安です」
これは本当のことだ。
でもそのまま出すかどうかは、また別の話だと思っている。
たとえば「まだ全体像がつかみきれていないので、どこから動いていくべきか確認させてください」という言い方ができれば、不安を正直に出しながらも、前向きなニュアンスになる。
感情は本物でいい。でも言い方は選べる。
感情と表現は、切り離していい。
これは適応障害を経験したときに気づいたことでもある。
感情をそのまま出すことと、感情を正直に伝えることは、同じじゃない。
結局、1on1は怖いもので合っている

完璧な話をしなきゃいけない場じゃない。
何か有益なことを言わなきゃいけない場でもない。
入社直後の1on1なんて、上司側も「この人がどういう人か少し知れればいい」くらいの気持ちでいることが多い。
でも「怖い」という感覚は正常だと思う。
評価される立場に入ったばかりで、まだお互いのことをよく知らない。
緊張して当然だ。
私は今もまだ少し怖い。
でも「怖いまま臨んでいい」と思ったら、少しだけ楽になった。
1on1は、答えを持っていかなきゃいけない場所じゃない。
それだけわかれば、もうちょっと肩の力が抜ける気がする。
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