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「中途なんだから」という呪いに縛られていた——相談できない孤独の正体

転職
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1on1で「大丈夫です」と言った

今日も1on1があった。

「何でも言ってね」とマネージャーが言ってくれる。
優しい人だと思う。悪意はどこにもない。

それでも私は「ありがとうございます、今のところ大丈夫です」と答えた。

大丈夫じゃなかった。

正直に言えば、まだ自分が職場で役に立てているかよくわからないし、毎日なんとなく不安で、「これって聞いていいのかな」と考えながら自分で調べて、それでもわからないまま抱えて、一日が終わる。
そういう日の繰り返しだ。

「仕事、慣れてきた?」と聞かれると「はい、少しずつ」と答える。
本当は「慣れてきたかどうかもよくわからない」と思っているのに。

なぜ言えないのか。
自分でもわかっている。
「中途入社なのに、そんなことを言えるわけない」という感覚が、自分の中にある。

「弱みを見せたらアウト」という感覚はどこから来るのか

誰かに「弱音を吐くな」と言われたわけじゃない。

マネージャーは「気軽に聞いて」と言ってくれる。
チームの人たちも、接し方は丁寧だ。
ただ、なんとなくわかる気がするのだ。

中途で入ってきた人間が「まだ自信がなくて」とか「何をすればいいかわからなくて」なんて口にしたら、どう映るかを。

「即戦力として採用したのに、大丈夫かな」
「中途なのに新卒みたいなことを言っている」
「何甘えてんだ」

そんな声が聞こえるわけじゃない。

でもチーム全体の空気が、なんとなくそう語っているような気がしてしまう。

弱みを見せられない理由は、特定の誰かへの不信感じゃなくて、自分の内側にある思い込みから来ている。

「中途なんだから自分でどうにかしなきゃいけない」
「すぐに実績を出さなきゃいけない」
「育ててもらうのは新卒の話で、自分はそういう立場じゃない」。

そういう前提が、気づかないうちに自分の中に根を張っている。

助けてほしいと思う。本当に思う。
でも「それを口にしたら終わりな気がする」とも思う。

そのジレンマの中で「大丈夫です」と言い続けている。

採用担当として6年間、「逆側」にいた

少し前まで、私は人事部にいた。


新卒採用・中途採用・社員研修・労基対応をほぼ一人でまわす6年間。
採用面接で「入社後はどんな活躍をしたいですか?」と聞く側だった。

そのときの自分を振り返ると、正直なところ、中途で入ってきた社員の「入社後の孤独」に、どれだけ向き合えていたか怪しい。

面接では誰でも元気に見える。
「やる気があります」「前職ではこういう実績がありました」と話してくれる。
でも入社後、現場に放り込まれてからの状態を、採用担当が把握するのはなかなか難しかった。

新卒には研修があり、メンター制度があり、定期的なフォロー面談がある。
でも中途社員には「ようこそ、では現場でよろしく」と即実務、というケースが少なくない。
会社側に悪意はない。
ただ「中途は即戦力だから大丈夫だろう」という思い込みがある。

今、その「放り込まれた側」になって初めてわかった。
「大丈夫だろう」は、大丈夫じゃないのだ。

採用担当だった自分に言いたい。

「入社後の中途社員にも、もう少し声をかけてあげてくれ」と。

そしてあのときフォローが薄かったであろう中途社員たちに、少し申し訳なく思っている。

6割が孤独を感じている、という数字

ある調査結果を見て、少し楽になった。

中途採用者の約6割が「職場で孤独を感じている」というデータがある(パーソルキャリア調べ)。
同調査では、「悩みを十分に相談できている」と答えた転職者はわずか2割程度だという。

6割。10人いたら6人が孤独を感じている。
2割。10人いたら相談できているのは2人。

「自分だけがこんなに弱い」と思っていたけれど、そうじゃなかった。

これは「個人の心の弱さ」の問題じゃなくて、「中途入社という立場が構造的に相談しにくい状況を生んでいる」問題なのだ、と少し見方が変わった。

即戦力を期待する会社側。「できる人間だと思われたい」転職者側。

その二つの力が噛み合って、「相談できない」という状況が生まれている。
誰も意地悪をしているわけじゃない。
でも誰もうまくやれていない。

今の私がやっていること

完全な解決策は、まだ持っていない。
ただ、少し楽になったことをいくつか書いておく。

「中途なんだから」という言葉を疑う

「中途は即戦力でなければ」「弱みを見せるな」「自分でどうにかしろ」——これを会社や上司に実際に言われたか?と問い直したとき、私の場合は答えがNOだった。

誰も言っていない。
自分が勝手にそう決めていただけだった。

呪いに縛られるのは、呪いをかけた人がいるからじゃなくて、自分がその呪いを信じているからだ。

だとすれば、「本当にそうなのか?」と疑うところから始めることができる。

全部を出さなくていい

1on1で弱音を全部吐き出す必要はない。「自信がないです、助けてください」と言える人は正直すごいと思う。
でも私にはまだそこまでは難しい。

だから、小さいところから始めている。
「このやり方で合っていますか?」「優先順位のつけ方を一度確認させてください」——これは弱音じゃなくて確認だ。

でも実際のところ、確認という形で少し助けを求めている。
完全な開示より、小さい一歩の方が続けやすい。

職場の外に、話せる場所を持つ

職場で言えない分を、職場の外で言えるようにした。

転職経験のある友人、SNSで繋がったキャリア系のコミュニティ、あるいは単純に愚痴を受け止めてくれる人。

職場内で全部完結させなくていい。
抱え込む量を減らすだけでも、かなり違う。

「育ててもらう感覚」を持っていいかもしれない

「育ててもらうのは新卒の話」と思い込んでいたけれど、最近これを少し疑っている。

経験者であっても、新しい環境に慣れるまでには時間がかかる。
それは能力の問題じゃなくて、人間が環境に適応するための時間の問題だ。

採用担当として何人もの中途入社者を見てきた経験から言うと、入社3ヶ月で完璧に動ける人は本当にほとんどいない。みんな何かを抱えながらやっている。
ただ表に出さないだけで。

「即戦力として採用された」は事実だとして、それは「入社初日から一人でなんでもやれ」という意味じゃないはずだ。

少なくとも、私はそう解釈し直している。

最後に

「中途なんだから」という言葉を、自分の声で自分に言い聞かせながら働いている人がいたら、届いてほしい。

弱音を飲み込んでいるのは、甘えじゃない。
むしろその飲み込み方が積み重なると、長い目で見ると仕事にもメンタルにも影響が出る。

私自身、まだうまくやれているとは言えない。
でも「言えない」という自分の感覚に気づいた時点で、少しだけ前に進んでいる気がしている。

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呪いに気づいたなら、半分は解けたようなものだから。

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