「辞めたいけど、これって逃げなんじゃないか」と検索しているなら、先に結論を書いておく。
少なくとも私は、採用担当として応募者の退職理由が「逃げかどうか」で合否を判断したことは一度もない。
見ていたのは「その転職が、その人の問題の解決策になっているかどうか」だ。
私は人事として面接で退職理由を聴く側を経験し、その一方で自分自身も「完全に逃げの理由」で転職を考えたことがある。
この記事では、その両側の経験から次の4つを書く。
- 採用側はネガティブな退職理由をどう見ているか
- 自分の転職が「逃げ」かどうかを見分ける判断基準
- 面接でネガティブな退職理由を伝えるときのポイント
- 判断基準より先に、すぐ逃げていいケース
「逃げの転職は甘え」とは限らない——採用側が実際に見ていたもの

退職理由がネガティブなのは、正直、当たり前だと思っている。
現職への不満がきっかけで転職活動を始める人は多い。
だからネガティブな理由そのものは、少なくとも私の中ではマイナス評価の材料にならなかった。
私が面接で見ていたのは、その先だ。
「何が嫌だったのか」を具体的に言語化できていて、「それはうちに来たら解決するのか」がつながっているか。
ここがつながっていない人は、入社後も同じ悩みを抱えるリスクが高い。
採用側が一番恐れているのはそれだ。
逆に、嫌だったことを言語化できていて「だから次はこういう環境を選んだ」と筋が通っている人は、理由がどれだけネガティブでも評価できた。
つまり「甘えと思われないか」「逃げと思われないか」という悩み方は、採用側の評価軸と最初からズレている。
問うべきは「この転職は、解決策として機能しているか」の一点だ。
自分の転職が「逃げ」かどうかを見分ける判断基準
判断基準は3つの問いに集約できる。
① 何が嫌なのか、具体的に言語化できるか
「とにかく無理」「なんか合わない」のままなら、まだ判断できる段階にない。
「上司の指示が毎週変わる」「評価基準が不明確」のように、出来事のレベルまで分解する。
② その問題は、今の職場で解決できるか
言語化できた問題を一つずつ見て、今の環境での打ち手が残っているかを確認する。
ここで「解決できるのに逃げたいだけ」なら、転職先でも同じことを繰り返す可能性が高い。
③ その問題は、転職で解決するか
①②を経て「今の職場では解決できず、環境を変えれば解決する」なら、それは逃げではなく解決策としての転職だ。
誰に何と言われても筋は通っている。
実例を一つだけ書く。
私が初めて「辞めたい」と思ったときの理由は完全に逃げだった。
でも信頼できる上司に話して出来事と感情を分けて整理したら、抱えていた問題は当時の職場で課題として取り組めば解決できるものだとわかり、転職をやめた。
翌年も辛い出来事があったが、同じ理由で思いとどまった。
転職したのは2年後、課題をやりきった上で「なりたいキャリア」を考えたら今度は転職が解決手段そのものだったからだ。
3回とも、やったことはこの3つの問いの確認だけ。
逃げかどうかで悩んだ時間は、判断の役に立たなかった。
面接でネガティブな退職理由を伝えるときのポイント
判断基準を通過して転職を決めた人向けに、面接官側から見たポイントを書いておく。
嫌だった事実は隠さなくていい。
ただし「出来事」で語る。
「人間関係が最悪で」ではなく「配属後3年間、業務範囲が明文化されず○○の状態だった」のように、感情ではなく出来事として説明する。
事実ベースで話せる人は、それだけで整理ができている印象になる。
他責と自責を分けて話す。
環境の問題と、自分に足りなかったものを分けて話せるか。
全部を会社のせいにする説明は、内容が正しくても「うちでも同じことを言いそうだ」と思わせてしまう。
「だから次はこれを求める」まで接続する。
退職理由と志望理由が一本の線でつながっていれば、出発点がどれだけネガティブでも筋の通った転職になる。
私が面接官として評価していたのは、まさにこの接続だった。
例外:判断基準より先に、逃げていいケース
ここまでの話には例外がある。
心身にすでに不調が出ている場合——眠れない、食べられない、出勤前に涙が出る、医師から診断が出ている——は、3つの問いを検討するより先に、その環境から離れることを優先していい。
休職・異動・退職、手段は何でもいい。
健康を失ってからでは、判断基準どころではなくなる。
私自身、適応障害を経験している。
私の場合は幸い、事実と感情を切り分ける対話に付き合ってくれる上司がいたから踏みとどまれたが、それは環境に恵まれた結果であって、我慢が正解だったという話ではない。
逃げる力が必要な局面は、確実にある。
今日からできる3ステップ(ワークシート付き)

判断基準を実際に回すための手順はこれだけだ。
① 嫌なことを紙に書き出して、「出来事」と「感情」に分ける。
「上司に詰められた(出来事)」と「もう無理だと思った(感情)」を分けるだけで、頭の中の渦がかなり静かになる。
私が上司との対話でやっていたことの一人版だ。
② 出来事ごとに「今の職場で解決できるか」を○×でつける。
×が並ぶなら転職は解決策になり得るし、○が多いなら転職しても同じ問題を持ち越す可能性が高い。
③ 信頼できる人に話して、○×を検証してもらう。
一人で考えると感情が採点を歪める。
社内に話せる人がいなければ、ハローワークのキャリアコンサルタントという手もある。
無料で、利害関係なしに聴いてもらえる。
ちなみに、判断基準③の「その問題は転職で解決するか」だけは、自分の頭の中だけで考えても答えが出にくい。
ここは想像ではなく、実例で確かめた方がいい。
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似た状況から転職した人が「どこへ移って、何が変わったか」を知りたいなら、ワンキャリア転職で転職体験談を読んでみるのも一つの手だと思う。実際の転職者のキャリアパスや年収の変化が見られるので、③の答え合わせの材料になる。
まとめ:問いを「逃げかどうか」から「解決策かどうか」へ
「逃げの転職は甘え」という言葉に縛られて動けない人は、たぶん優しくて真面目な人だ。
でも採用側が見ているのは、逃げかどうかではなく、その転職が解決策になっているかどうか。
だったら悩む場所をそちらに移した方がいい。
完璧な答えを出してから動く必要はない。
まずは今夜、嫌なことを一つ紙に書いて、出来事と感情に分けてみるところからで十分だと思う。
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