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転職回数を気にしすぎると損する——採用担当が見ていた本当の所

自己分析
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書類を開いて、まず職歴の欄に目がいく。

会社名が三つ、四つと並んでいると、正直、一瞬だけ「おっ」と思う。多いな、と。

採用担当をやっていた頃、私は何百通と職務経歴書を見てきたけれど、この「おっ」という反応自体は、たぶん多くの担当者に共通している。

ただ、白状すると、私自身は転職回数で悩んだことがない。

今の会社に来たのが人生で初めての転職で、その前は生産現場から人事へ、同じ会社の中で異動しただけだ。
だから「回数が多いと不利らしい」という不安を、自分ごととして味わったことはない。

でも、その不安を抱えた人を、面接する側として何人も見てきた。
書類に並んだ会社名の数を気にして、聞いてもいないのに先回りして言い訳を始める人。
回数の話になった途端、声のトーンが下がる人。
あの空気は、こちらにもはっきり伝わってくる。

そして今日書きたいのは、その「回数を気にしすぎる」こと自体が、実はいちばん損をしているんじゃないか、という話だ。

「3回以上は多い」という空気は、どこから来るのか

転職回数について調べると、だいたいどこにも似たようなことが書いてある。

30代だと「3回以上」あたりから多いと見られやすい、平均は2〜3回くらい、と。
数字を見た瞬間、自分がその線を越えていると、急に胃のあたりが重くなる。
あの感覚はよくわかる。

厄介なのは、この「多いと不利」という空気が、根拠を確かめないまま一人歩きしているところだ。
ネットにも周りにも転がっているから、いつの間にか「回数が多い自分は、それだけで負けている」という前提で転職活動を始めてしまう。

でも、採用する側に座ってみると、見えている景色は少し違う。

採用担当が本当に見ていたのは、回数じゃない

ぶっちゃけ、私が書類と面接で見ていたのは、回数そのものではなかった。
見ていたのは「なぜ辞めたのか」の語り方、そこに一本、筋が通っているかどうかだ。

採用担当がいちばん怖いのは、「この人、うちでもすぐ辞めるんじゃないか」という一点に尽きる。
回数が多いと、その不安が反射的に立ち上がる。

でもその不安は、辞めた理由に納得できる線が通っていれば、するっと消える。

逆に、回数が二回や三回でも、語りが全部「会社が悪かった」「上司が合わなかった」で埋まっていると、こちらは一気に身構える。

だってその論法だと、うちに来ても同じことを言って去っていく気がするから。

実は、私が面接でいちばん厳しく見てしまったのは、回数が飛び抜けて多い人ではなかった。
辞めた理由を、全部まわりのせいで語る人だった。
「評価してもらえなかった」「環境が悪かった」——一つひとつは本当にそうだったのかもしれない。

でも、四つの職歴が四つとも他人のせいで語られると、そこに残るのは「この人は、自分の側の物語を持っていない」という印象だけだった。

考えてみれば当然の話でもある。

担当者はその応募者の前職で一緒に働いたわけじゃない。
だから事実の真偽を確かめるすべはない。

判断できるのは、目の前の人が自分の過去を「どう受け止めて、どう言葉にしているか」だけだ。

回数は変えられない事実として置いておいて、私たちが実際に読み取っていたのは、その受け止め方のほうだった。

落とし穴は「回数」じゃなく「取り繕い」にある

ここに、回数を気にしすぎる人がはまる落とし穴がある。

回数を弱みだと思い込むと、人はそれを隠そう、取り繕おうとする。

すると語りが不自然になる。聞かれてもいないのに言い訳から入ったり、逆に理由を曖昧にごまかしたり。
その不自然さのほうが、回数の数字よりもずっと減点になる。
皮肉な話で、回数そのものより「回数を気にしている態度」が伝わってしまうのだ。

一方で、回数が多い人には、多い人にしかない強みもある。

何度か動いた分だけ、「自分は何を求めて、何を避けたくて動いたのか」という材料を、人より多く持っているということだ。
使える材料が多いのに、それを弱みだと決めつけて封印してしまうのは、正直もったいない。

落とし穴を知っているからこそ、強みが使えるようになる。
回数は隠す対象ではなく、「一貫した物語」に編集するための素材だ——そう捉え直せた人から、面接の空気は変わっていく。

明日からできる、語り方の整え方

とはいえ、「一貫した物語にしよう」と言われても、いきなりは難しい。
だから具体的に、手を動かせる形で書いておく。

まず、これまでの「辞めた理由」を時系列で紙に書き出す。

そのうえで、他人や環境のせいになっている箇所に印をつける。
全部あぶり出すのが目的だ。責める必要はない。

ただ、自分の語りがどれくらい他責に寄っているかを、一度目で見て確かめる。
採用担当は結局そこを読んでいたから、まず自分で先に読んでおくということ。

次に、それぞれの転職を「何を求めて動いたか」という主語で、一文に書き直す。

「上司が嫌で辞めた」ではなく「もっと裁量のある環境を求めて動いた」。
事実は変えなくていい。向きだけ、外から自分へ戻す。
これを全部つなげたとき、うっすらとでも一本の線が見えてきたら、それがあなたの「軸」だ。

その線がどうしても自分で見えないときは、無理に一人でひねり出さない。

ハローワークには無料でキャリアコンサルタントに相談できる窓口がある。
転職エージェントにいきなり登録する前に、まずお金のかからない場所で自分の職歴を棚卸ししてもらうと、他人の目を通して線が見えてくることがある。
手前の一手として、けっこう使える。

自分の強みや市場価値を、もう少し客観的な数字で確かめたいなら、診断ツールを一度通してみるのも手だと思う。

回数は変えられないけど、語り方は今日から変えられる

転職回数は、もう起きてしまった事実だ。
何回だったかは、どうやっても書き換えられない。

でも、その回数に「どんな意味を持たせて語るか」は、今日から変えられる。
採用担当が見ていたのは、まさにそこだった。

数字そのものではなく、あなたがその数字とどう向き合っているか、だ。

完璧に筋の通った物語を、いきなり用意する必要はない。

まずは辞めた理由を一つだけ、他人の側から自分の側へ書き直してみる。

それだけで、面接で口から出てくる言葉のトーンが、少し変わる。

回数を気にして小さくなる時間があるなら、その分を語り方の編集に使ったほうがいい。

少なくとも、私が向こう側で見ていたのは、そういう人だった。

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